3世代メディア変遷
今年のニュースは、野球では大谷翔平選手の動向、政治と経済はトランプ大統領の動向とアメリカの情勢から始まっていたように思います。一方、録画していたドラマを見ようとしたら、内容はフジTVの記者会見になっていました。そして、昨年12月23日に発表されたホンダと日産の経営統合は、わずか1.5か月で破談となりました。ウクライナ侵攻は続き、ガザとイスラセルの停戦合意が継続されるかの心配は続いています。
このように変動が激しい中ですが、大人と違って、子供たちはネットを駆使してメディアを使っています。 「ニュースは暗いものが多く見たくない」と筆者の娘の一人は言います。また、もう一人の娘は「TVは子供が独占しているので情報収集はスマホ」と言います。
現在5歳(筆者の孫の平均年齢)の子供と、筆者世代70歳(筆者と夫の年齢)あるいは筆者の子供世代42歳(筆者の子供の平均年齢)とのメディア変遷の違いに触れたく存じます。
-メディア普及率からみる世代プロフィール
まずメディア普及率を使って世代間の違いを明らかにします。図1はコンテンツ視聴に関わるラジオ、TV、インターネットTV、YouTube、コミュニケーションに関わる固定電話、携帯電話、SNS、そしてゲームに関わるゲーム機の普及率を示したものです。
これに従うと3世代は以下の様になります

筆者世代が使えたメディアはラジオ、TV、固定電話の3種、子世代はこれにゲーム機が追加され、孫世代ではインターネットTV、YouTube 、固定電話、携帯電話、SNS、ゲーム機が加わります。そしてラジオと固定電話はメディア選択肢の中に入っていません。
-コンテンツ視聴メディアの変遷
【TV】
筆者は5歳(1960年)頃父の会社の社宅に住んでいました。日本のTV放送は1953年に開始されましたが、長屋スタイルの自宅にあった電化製品は洗濯機ぐらいで、TVはありませんでした。風呂は社宅の共同銭湯でした。夕方放送される子供番組を見せてもらいに、妹と二人、下駄をカタコトさせて近所の家に出かけて行ったのを覚えています。
自宅にはラジオがあったと思うのですが、ニュースを聞いた記憶はありません。その代わり、2番館映画館で、日本最初のカラー映画である「山椒大夫」などを見たとき、映画が始まる前にニュースが放映されたことは記憶にあります。

TVが我が家にきたのは上皇成婚の1959年です(TV普及率約20%)。以来、65年間、TVと付き合ってきたわけです。最近ではLiveでみるのはニュースぐらいで、あとは映画やドラマを録画してCMを飛ばして、2倍速でみるというのが、定常パターンです。
子供世代が5歳だったのは1988年頃です。2-3歳ごろはEテレの子供番組で、後にアンパンマンでした。そして、放送がないときは録画したアンパンマンを繰り返し見ていました。 あとはディズニー映画のVHSなどを見ていたように思います。
【インターネットTV&YouTube】
筆者世代がインターネットTVを使うようになったのは大体2015年ぐらいの様に思います。インターネットTVになっても、結局、AMAZON PrimiVideoを見るぐらいです。YouTubeは、仕事関係で観ることが多いので、PCあるいはPADで見るというのが当たり前になっています(まぁインターネットTVは夫が占領していて、使えないという事情も影響しているかもしれませんが)。
子供世代もPrimeVideoとかNetflixとかを見るぐらいのようです。
一方、現在4-11歳の孫世代は、最初からインターネットTVのわけです。2-3歳ごろはEテレの子供番組で、後にアンパンマン、アンパンマンの録画というのは、子供世代と一緒でした。が、TV自体がインターネットTVであるので、4歳ぐらいから、PrimeVideo、そして現在ではYouTubeに移っています。
筆者世代はTVからインターネットTVに移行するのに50年間かかって、まだYouTubeはPCで観ていますが。孫世代はインターネットTVからYoutube に移るのにわずか2年間ぐらいしかかかっていません。そしてYouTubeはインターネットTVで観るものなのです。
YouTubeはいろいろな動画が配信されているので、技術伝承やバイト内容の教授などいろいろに使われています。孫娘がUSJで買ってもらった化粧道具で上手に化粧をしていて驚きました。母親である私の娘の化粧方法と違うので誰に習ったのだろうかと不思議だったのですが、YouTubeで小学高学年ぐらいの女子がやっているのをじっとみているのを発見し、指南役が判明しました。
YouTubeは単なるコンテンツ視聴ではなく、教育手法としても確実に地位を確保しているのですね。
-コミュニケーションメディアの変遷
筆者が小学1年生の頃のコミュニケーションメディアは公衆電話でした。それ以外は手紙で、緊急の時は電報でした、今では電報は弔電や祝電の時ぐらいしか使いませんね。
現在はスマホとSNSも使っていますが、メールは両手打ちができるPCが速くて楽です。スマホもローマ字入力派です。
現筆者世代は家に固定電話があるのが当たり前でした。しかし孫世代は、家に固定電話はなく、両親それぞれがスマートフォンをもっています。スマートフォン買い替えの時に、古いスマホをWiFiにつないでゲームをするのが、通常です。さすがにまだSNSデビューはしていないようですが、SNSデビューしたら、炎上などいろいろ心配毎が増えそうです。
-ゲームメディアの変遷
筆者が5歳ごろやっていたのは、神経衰弱やばば抜きなどのトランプゲームです。小学生ぐらいから麻雀や花札、百人一首などもやりました。
ゲーム機開発に関係したことはありますが、自身では電子デバイスを使ったゲームはやりません。というかできません。夫も紙ベースで数独をやるぐらいです。
子供世代は、小学生ごろファミコンをやっていました。現在はスマホでPokémon GOをやっています。ゲームは専用ゲーム機がなくても、スマホでできるようになった点も大きな変化です。
孫世代は、6歳ぐらいからNINTENDO Switchをはじめ、11歳の現在はMinecraftに嵌まっています。6歳の孫もMinecraftをやっています。
ゲームはファイナルファンタジーなどのアクションゲーム、ゼルダの伝説などのアドベンチャゲーム、ドラゴンクエストなどのロールプレイングゲーム(RPG)、バトルフィールドなどのシューティングゲーム、FIFAなどのスポーツゲーム、テトリスなどのパズゲーム、バイオハザードなどのホラーゲーム、あつまれ動物の森などのシミュレーションゲーム、そしてこれらの複数の要素を組み合わせたMinecraftなどのサンドボックスゲームに分類されます。
孫世代はアクションゲームやRPGなどを経ずにいきなりサンドボックスゲームに取り組んでいるのに驚いています。しかも、ゲームするだけでなく、他人のゲーム状況の録画をYouTubeで観るのですが、何が面白いのか理解できません。さらにMinecraftはブロック図柄の絵が、筆者にはモザイクにしか見えないので、陳腐にしか思えないのです。
コンテンツ鑑賞メディアではYouTubeのような万能型、コミュニケーションメディアもスマホのように公衆網からWiFi、そしてアプリまでの万能型、ゲームメディアもスマホでMincraftのような万能型と、いずれも万能型にシフトしつつあります。
TVに関しては、筆者世代の25倍速で進んでいる孫世代ですが、ゲームに関しては、 1年間÷0=∞速で進んでいます。
この後は生成AIを使ったゲームになるでしょうから、それなら筆者世代も参戦できるかもしれません。また、SNSについてはゆっくり進んでほしいと思います。
(2025年2月)
筆者紹介
土井 美和子氏

国立研究開発法人情報通信研究機構 監事(非常勤)
東北大学 理事(非常勤)
奈良先端科学技術大学院大学 理事(非常勤)
株式会社三越伊勢丹ホールディングス 取締役(社外)
株式会社SUBARU 取締役(社外)
日本特殊陶業株式会社 取締役(社外)
1979年東京大学工学系修士修了。同年東京芝浦電気株式会社(現㈱東芝)総合研究所(現研究開発センター)入社。博士(工学)(東京大学)。以来、東芝にて35年以上にわたり、「ヒューマンインタフェース」を専門分野とし、日本語ワープロ、機械翻訳、電子出版、CG、VR、ジェスチャインタフェース、道案内サービス、ウェアラブルコンピュータ、ネットワークロボットの研究開発に従事。