失敗による発見
年も明けて既に半月を過ぎましたが、本年も宜しくお願い致します。
皆さんのお正月はいかがでしたでしょうか?
筆者の方は、年始年末は娘2家族が来て、合わせて10人でなかなかにぎやかでした。仕事が休みになって寝具やおせちの準備を開始し、3日まで食事作りに明け暮れでました。皆が帰った後は寝具の片づけや掃除で、4日は筋肉痛で、一大プロジェクトは完了しました。
年始年末のこのようなイベントだけでなく、国内外の旅行は、ある種のプロジェクトと思います。プロジェクトはいつも成功するわけではありません。しかし、失敗しても何らかの発見があります。今回は、11月中旬に実施した高校の同級生4名+我々夫婦2名の古希天草プロジェクトを例題にして、失敗からの発見を紹介します
-古希天草プロジェクトのきっかけ(2024年6月)
高校時代の同級生とは、10年以上前から、年に1度6月ぐらいに我が家に集まって、持ち寄りランチをし、5時間ぐらい話し込む会をやっています。昨年の集まりで、「熊本には次女家族がいるからよく行っているけれど、今後一緒に遊びに行きましょう」となぜか夫が誘いました。同級生の一人が「天草に行ったことがないから、行きたい」と言い始め、大乗り気になった訳です。
今まで1度も一緒に旅行などしたことがなかったのにほぼ古希の6人が、いきなり天草へ旅行というプロジェクト自体が、通常の判断であれば、失敗するリスクが高いプロジェクトと言えたでしょう。さらに言い出しっぺの夫は、きっかけを作っただけで計画など一切しませんので、これも失敗プロジェクトの典型です。しかし、失敗しないように、リスクを考慮して計画することが重要なのです。
-プロジェクト概要設計(2024年7月)
天草は大小120余の島から成っています。おもな島は上島(かみしま)と下島(しもしま)で、崎津集落などの世界遺産や多くの観光スポットがあります。どれを選ぶかが重要です。 今回は下島にある崎津集落、大江天主堂、下田温泉、イルカウオッチングと、これらの途中にある道の駅(宇土アリーナ、有明、イルカセンター、天草パールガーデン)を選びました。
現地の移動には崎津教会など天草の観光ポイントを回るバスを利用する手段もあるのですが、それぞれでの滞留時間が長く、目的の下田温泉まで行くことは難しそうなので断念、レンタカーを利用することにしました。
運転手は、免許保持者2名のうち1名が「知らない場所での運転は無理」とのことで、名古屋在住の同級生に決まりました。
この状態で、7月に運転手役の同級生と打ち合わせをし、日程を11月21-23日に決定、他の3人の都合も問題ないことがわかりました。我々夫婦は前日に熊本入りし、他の4人は21日に到着、22-23日と一緒に天草に行くことにしました。工程は図1です。
2024年5月のゴールデンウイークの時に、娘2人の家族とやはり天草まで行ったのですが、その時には2か月前の3月に下田温泉で空きがあったのは1か所だけでした。その経験を元に、出発4か月前にネットで2部屋下田温泉の予約を取り、飛行機はそれぞれ予約をしました。宿もフライトも4か月も前なのに、結構混んでいて苦労しました。
-古希天草プロジェクト1日目(2024年11月22日)
1日目の予定は以下です。
9時ごろ出発
↓1時間
道の駅宇土マリーナ
↓1時間
昼食場所候補 道の駅有明(1時間)
↓1時間強
崎津教会(30分)
↓15分
大江教会 (30分)
↓20分
望洋閣 15‐16時頃到着
この予定では、最後の望洋閣に着く時間帯がバッファになっています。道の駅有明では、施設に入るのに左折すべきところを右折して、展望台に出ました。道を間違える失敗だったのですが、バベルの塔の一部のような「ありあけタコ街道展望所」には、人もおらず、見える海と空はどこまでも青く大変気持ちが良かったです。これも失敗がなければ、味わえなかった絶景です。その後、道の駅に駐車して、浜辺まで下りました。こちらもヤシの影が砂浜に落ちて、まるでハワイのようでした。
次に訪れた崎津教会には写真1のようにクレーンがかかって工事中なのかと思ったら、クリスマス用のイルミネーションの飾りつけの最中でした。クレーンで持ち上げられた籠に乗った職人さんたちが飾りつけをされました。休憩で降りてきた職人さんたちに、「籠に乗ってみるかい?」と声をかけられました。
崎津教会見学後、「トイレに行きたい」と夫が言うので、トイレを探しました。トイレは崎津教会を見下ろす崎津諏訪神社のふもとにありました。夫以外は健脚なので、夫を残して、女子5人で神社に上りました。神社は新年を迎える準備中で、準備をしているおじさんたちと同級生たちがにぎやかにやりとりしていました。こちらの神社は潜伏キリシタンが氏子となり、参拝の際には密かにオラショ(お祈り)を唱えていたといった、いろいろ歴史のある神社だったのですが、前回訪れた時はそんな由緒のある場所とは知らず、すっ飛ばしてしまいました。今回はトイレ探しを行った夫のおかげできちんとお参りすることができました。
次の大江教会も海が見えるきれいな場所でした。周囲にある墓は一応仏教の体裁でしたが、十字架が刻印されており、ここにも隠れキリシタンの片鱗を見ることができました。
失敗というわけではないですが、予定にない気づきガありました。
-古希天草プロジェクト2日目(2024年11月23日)
2日目の予定は以下です。赤字は当日の変更分です。
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望洋閣 10時出発→9時出発
↓30分
イルカウオッチング(耳茅野駅イルカセンター) 乗船1時間→乗船2時間
昼食
↓1時間強
天草パールガーデン おみやげやおやつなど(2時間→1時間)
↓1時間15分-2時間 熊本空港(1730ぐらいまでに到着し、車返却)
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当初11時30分のイルカウオッチングに乗船する予定でしたが、朝食を早めにして、再度の休憩で時間をつぶせばよいのではということで、ホテルフロントで10時の船を予約しました。イルカセンターに着くと、乗船前の説明で「1日の最初の船は、イルカの場所を探すので、1時間以上かかる場合があるが大丈夫か」と念を押されました。バッファの天草パールガーテンは2時間で余裕はあるので大丈夫ということで乗船しました。乗客18名のうち半分は中国からの団体です。
出発後1時間ほどかけて昨日イルカの群れがいた場所に着きました。そこは写真2のように雲仙茸が目の前にみえるところでしたが、本日はイルカがいないということで今度は南下しました。
外洋なので波が荒く、結構波しぶきでレザージャケットが濡れました。乗船せずイルカセンターで待っていた夫からは、「待ちくたびれたから、2Fでお昼を食べ始めるよ」とショートメッセージが来ました。乗船から1時間ほどしたら「昨日の場所近くでイルカの群れが発見されたので、北上しますが、大丈夫でしょうか?」とアナウンスがありました。
そしてようやく、イルカの群れに出会えました。他の船も集まってきて、その船の下をくぐるようにしてイルカたちが次々にやってきます(写真3)。
イルカを諦めて 「今日は雲仙茸も堪能したしよかったよ」と自分を納得させようとしていたところ、まさに感激の瞬間です。ジャケットが海水だらけになっているのも何のそのです。船員さんに確認したところでは100頭ぐらいの群れとのことでした。
帰りは、すごいスピードでした。11時半発の次の船と途中ですれ違いました。が、雲仙茸とイルカの群れを堪能した我々は満足感でいっぱいでした。
もし晴天でなく、また、イルカの群れにも出会えなかったら、この古希天草プロジェクトは失敗になったでしょう。
しかしあきらめずにイルカを探してくれた船員さん達の熱意や、安全な運転をしてくれた同級生など皆のおかげで古希天草プロジェクトは大いに楽しめました。ドライバ役の同級生は「運転が楽しくなった」と喜んでいました。70歳になってもまだまだ生まれて初めてという経験ができるということが確認できたという満足感でしょうか?
(2025年1月)
筆者紹介
土井 美和子氏
国立研究開発法人情報通信研究機構 監事(非常勤)
東北大学 理事(非常勤)
奈良先端科学技術大学院大学 理事(非常勤)
株式会社三越伊勢丹ホールディングス 取締役(社外)
株式会社SUBARU 取締役(社外)
日本特殊陶業株式会社 取締役(社外)
1979年東京大学工学系修士修了。同年東京芝浦電気株式会社(現㈱東芝)総合研究所(現研究開発センター)入社。博士(工学)(東京大学)。以来、東芝にて35年以上にわたり、「ヒューマンインタフェース」を専門分野とし、日本語ワープロ、機械翻訳、電子出版、CG、VR、ジェスチャインタフェース、道案内サービス、ウェアラブルコンピュータ、ネットワークロボットの研究開発に従事。