先週は寒いぐらいだったのに、一気に真夏日、猛暑日になってしまいました。そんな5月は、同音異義語で食べられるクッキーと食べられないクッキーを取り上げます。
クッキー(食品)
在宅勤務でクッキーを食べる機会が増えている方も多いのではないでしょうか?クッキーの語源は中世オランダ語のkoekjeで、小さいケーキという意味だそうです。海外でよく出てくるクッキーは掌サイズで決して小さいと言えません(図1)。
イギリスでのクッキーはチョコチップクッキーやそのバリエーションを示し、一般的にはビスケットというようです。
4月末に行ったハンブルグでの国際会議でもこのチョコクッキーが午前と午後の休憩時に出ました。我慢できずに毎回食べてしまいましたが、その代わりに昼食を抜く必要が生じました。クッキーを食べながらだと盛り上がるので、パーティでも人気がありますよね。
クッキー(Web)
もう一つのクッキーは食べられないクッキーです。これは、Webで新しいサイトを閲覧するときやWeb会議をするときなどに、画面上に現れることがある、「すべてのクッキーを受け入れるか」か「Cookieの設定」をするかというメッセージ(図2)に出てくるあの「クッキー」です。
このCookieは現在アクセスしているWebサイトから、使っているスマホやPC内のブラウザに保存される情報が書かれたテキストファイルをさします。
許可を求められと不安に思われる方も多いかと思いますが、クッキーを許可したから危険になるというものではありません。ただし、以下のようなメリット・デメリットがあります。
1)メリット
Cookieの内容は、そのWebサイトを訪問した回数など様々なものです。FacebookやLineなど、一度IDとパスワードを入れるとその後アクセスしても入力しないで入れるのはこのCookieがあるからです。Cookieはユーザにとってだけでなく、サービスを提供する企業にも有益です。ショッピングサイトでの購買履歴などが記録されているので、サービス提供側は、Cookieを分析することでユーザへの推薦などをすることができるのです。ショッピングサイトで商品を買い物かごにいれたままにして、しばらくして戻っても、きちんと買い物かごに商品は入っているので、中断した買い物の続きをすることができます。中断が長いと、ショッピングサイト側から「買い物かごに商品が入っている」とメールが来ます。これもCookieのご利益です。
2)デメリット
食品のCookieはおいしいですが、カロリーが高いのがデメリットです。ではネットのCookieのデメリットはなんでしょうか?
一つはネットカフェや図書館などでインターネットを使った時には、次の利用者に自分の情報が格納されているCookieを利用されないように、削除するなどの対応が必要です。
もう一つのデメリットはパーティです。食品のCookieはパーティで残りの数が少なくなると、まだ食べてない人に割ったりして分け与えたりします。
ネットのCookieにもそれに似たものがあります。新しい歩行アプリをダウンロードして、使い始めるときに、「位置情報を他のXXと共有することを許可しますか」といったメッセージに出会ったことはないでしょうか?
ダウンロードした歩行アプリからのCookieはファーストパーティCookie(First Party Cookie)と呼ばれます。それ以外で共有するのがサードパーティCookie (Third Party Cookie、第三者Cookie)です。
Webサイトを使うと気づかないうちにサードパーティCookieを受け取ってしまい、見たくもない広告が表示されるのは、このサードパーティCookieの影響です。これは個人情報保護の観点から問題です。
AppleのブラウザであるSafariでは2017年からCookieに基づくトラッキングを防止する機能が搭載されていますが、GoogleのブラウザChromeでのサードパーティCookie廃止は2024年に延期されています。どうもGoogleが考案した保護技術のテストが難しく、時間がかかっているようです。
食品のCookieはおいしく、パーティは楽しいですが、食べ過ぎ、はしゃぎ過ぎにはご用心です。
同様に、ネットのCookieやサードパ-ティもそのデメリットに留意して、使いやすさと個人情報の保護を両立する必要があります。
(2023年5月)
筆者紹介
土井 美和子氏
国立研究開発法人情報通信研究機構 監事(非常勤)
東北大学 理事(非常勤)
奈良先端科学技術大学院大学 理事(非常勤)
株式会社三越伊勢丹ホールディングス 取締役(社外)
株式会社SUBARU 取締役(社外)
日本特殊陶業株式会社 取締役(社外)
1979年東京大学工学系修士修了。博士(学術)。同年東京芝浦電気株式会社(現㈱東芝)総合研究所(現研究開発センター)入社。博士(工学)(東京大学)。以来、東芝にて35年以上にわたり、「ヒューマンインタフェース」を専門分野とし、日本語ワープロ、機械翻訳、電子出版、CG、VR、ジェスチャインタフェース、道案内サービス、ウェアラブルコンピュータ、ネットワークロボットの研究開発に従事。