公務員の定年 2021年度から引上げ、2033年度に65歳に 人事院勧告

国会議事堂

人事院は、8月10日、国家公務員の定年を60歳から65歳に段階的に引き上げるよう、国会と内閣に勧告しました。
(定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出)
(同骨子)

人事院は毎年8月、給与その他の勤務条件の改善の勧告をしていますが、本年は、国家公務員の65歳への引上げの申出がありました。

人事院は、国家公務員法(第3条第2項)に従い、「給与その他の勤務条件の改善及び人事行政の改善に関する勧告」(人事院勧告)を毎年夏に国会と内閣に行っています。今年も、8月10日、安倍晋三首相が首相官邸で、人事院の一宮なほみ総裁から勧告を受け取りました。
日本の国家公務員は争議行為(ストライキ)が全面一律に禁止され、非現業職員には団体協約締結権も認められていないなど、労働基本権が大きく制限されています。そのため、人事院勧告は、一般的に公務員の労働基本権制限の代償措置とみなされています。
今回、2018年度の国家公務員一般職の月給を平均655円(0.16%増)、ボーナス(期末・勤勉手当)の0.05カ月引上げ等の勧告がなされましたが、合わせて「国家公務員の定年を段階的に65歳に引き上げるための国家公務員法等の改正についての意見の申出」がありました。

2011(平成23)年、人事院は定年を段階的に65歳に引き上げることが適当とする意見の申出をし、それを受けて、政府は2013(平成25)年、当面、年金支給開始年齢に達するまで希望者を原則として常勤官職に再任用することを閣議決定しました。その後、2017年6月の「経済財政運営と改革の基本方針2017」(閣議決定)において、「定年を段階的に65歳に引き上げる方向で検討することが適当」とし論点を整理し、本年2月、人事院に対し定年引上げについて検討を要請しました。

今回の申出では、以下のように現状を分析しています。

  1. 少子高齢化が急速に進展し若年労働力人口が減少している中、意欲と能力のある高齢者が活躍できる場を作っていくことが社会全体の重要な責務である
  2. 民間では、定年を引き上げる企業も一定数見られ、また再雇用者の大多数はフルタイム勤務となっているのに対し、公務では、再任用職員が増えているが、行政職(一)(ほとんどの職員に適用される俸給表)の再任用職員のポストは係長・主任級が約7割、勤務形態は短時間勤務が約8割と、職員の能力・経験が十分生かしきれず、他方、無年金期間が拡大する中、生活への不安が高まる恐れがある

そして、複雑高度化する行政課題に的確に対応し、質の高い行政サービスを維持していくためには、60歳を超える職員の能力・経験を本格的に活用することが不可欠であり、そのためには定年を段階的に65歳まで引上げ、採用から退職までの人事管理の一体性・連続性の確保、雇用と年金の確実な接続を図ることが必要としています。

さらに、以下のような提言をしています。

  1. 引上げ開始前を含めフルタイム再任用の拡大
  2. 新陳代謝を確保するため、当分の間役職定年制の導入(専門性が必要で後任が見つからない場合は、例外的に留任もしくは他の役職定年対象官職での任用を認める。)
  3. 希望に基づく定年前の再任用短時間勤務制の導入
  4. 60歳を超える職員の給与は60歳前の70%
  5. 能力・実績に基づく人事管理の徹底

政府は、来年の通常国会で関連法案を提出する方針です。なお、人事院勧告の対象は国家公務員ですが、地方公務員にもすぐに波及することが見込まれます。