政府は、5月31日、2016(平成28)年版の「自殺対策白書」を閣議決定しました。
白書に盛り込まれた警察庁の統計によると、2015年の自殺者数は、前年比1,402人減の2万4,025人で、4年連続で3万人を下回りました。2万5,000人を割ったのは1997年以来18年ぶりで、人口10万人あたりの自殺者数も19人と、20人を下回りました。
自殺対策基本法制定翌年の2007年との比較では、自殺者数は9,068人減となりましたが、19歳以下および80歳以上に大きな減少がなく、白書は、「高齢化に応じた自殺対策や若年層への対応が必要」と提言しています。
また、国際的には我が国の自殺率は高い水準です。白書は、15〜34歳の若い世代で死因の第1位が自殺となっているのは先進7カ国で日本のみで、その死亡率も他国に比べ高いものになっているなど、わが国の若い世代の自殺は深刻な状況にあると強調しています。
高齢者の自殺の背景をみると、自殺総合対策大綱(2012年8月28日閣議決定)によれば、慢性疾患による継続的な身体的苦痛や将来への不安、身体機能の低下に伴う社会や家庭での役割の喪失感、近親者の喪失体験、老老介護の介護疲れ等によるうつ病が多いといいます。白書や大綱では、高齢者の生きがいづくり対策も重要としています。高齢期における就労、ボランティア活動の役割は、こうした「心の健康」の確保の観点からも重視されるべきでしょう。
警察庁「自殺統計」・総務省統計局「推計人口」より「ひらくナビ50」作成
自殺対策の推進業務は、2016年4月より内閣府から厚生労働省へ移管されました。また2016年4月、改正自殺対策基本法が施行され、自殺予防計画の策定を新たに地方自治体に義務付けるものとしています。国、自治体による一層の積極的な取組みが求められます。