介護休業、介護休暇が取得しやすくなり、介護休業給付の給付率が引き上げられます。

「雇用保険法等の一部を改正する法律」が、3月29日に成立しました。この改正により、介護休業の分割取得や介護休暇の半日単位取得が可能になり、介護休業給付の給付率が引上げられます。

①雇用保険の財政状況が改善したことから、2016年4月1日以降、失業等給付にかかわる保険料率(労使折半負担)を、各1,000分の1引き下げ、雇用保険2事業の保険料率(事業主のみ負担)を1,000分の0.5引き下げる。
②高年齢者の雇用を一層促進するため、65歳以降に新たに雇用される者を雇用保険の対象とする(但し、保険料の徴収は2019年度まで免除)。
③女性の就業を促進するため、育児休業の申出ができる有期契約労働者の要件緩和や子の看護休暇の半日取得を可能とする。

改正には、雇用保険法だけでなく、育児・介護休業法、高年齢者雇用安定法、男女雇用機会均等法、労働保険料徴収法等多くの法律の改正が含まれています。

ここでは、介護離職の防止に向けた4つの改正事項について紹介します。なお、施行日は、以下の1から3の規定(育児・介護休業法改正)は2017年1月1日、4の規定(雇用保険法改正)は2016年8月1日です。

1.介護休業の分割取得
介護休業は、従来通り93日の限度は変わりませんが、これまでは、対象家族1人につき要介護状態に至るごとに1回だったのが、対象家族1人につき3回までの分割取得(要介護状態が続いていても)が可能になります。

(注)育児・介護休業法に定める「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことをいい、介護保険制度上の「要介護状態」(6か月間にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態)と同じではありません。介護保険の要介護認定を受けていなくても、介護休業の対象となり得ます。

2.介護休暇の半日単位取得を可能とする改正
介護休暇は、介護中の労働者が事業主に申し出ることにより、一年度に5労働日(対象家族が2人以上の場合は10労働日)を限度として取得できる休暇ですが、子の看護休暇の改正に合わせ、半日単位で取得できることになります。

3.所定外労働の免除制度等の創設
介護中の労働者が介護のために時間外労働の免除を請求した場合に、事業主は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、所定労働時間を超えて労働させることはできない、とするものです。また、介護中の労働者で介護休業をしていない者に対して、労働者の申し出に基づく連続する3年以上の期間における所定労働時間の短縮等の措置(注)を講ずることが事業主の義務となります。

(注)厚生労働省令により、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、始業・就業時刻の繰上げ・繰下げ制度、および介護サービスを利用する場合に労働者が負担する制度その他これに準ずる制度、のうちいずれか1つ以上の措置で、少なくとも2回以上の申し出が可能となる制度となる予定です。

4.介護休業給付金の給付率の引上げ
介護休業給付金の給付率は、2016年8月1日以降、当分の間、賃金の40%から67%に引き上げられます。介護休業給付は、基本的に支給単位期間ごとに支給され、原則として休業開始時賃金日額(休業開始前の1カ月あたりの賃金)×支給日数×67%です。

「賃金日額」は、事業主の提出する「休業開始時賃金月額証明書(票)」によって、原則介護休業開始前6か月の賃金を180で除した額です。これに30日を乗じることによって算定した「賃金月額」が426,300円を超える場合は、「賃金月額」は、426,300円となります。

なお、介護休業給付金は、以下の受給要件をすべて満たす雇用保険被保険者が、事業主に介護休業の申出をし、介護休業を終了した日から2か月を経過する日の属する月の末日までに、被保険者または事業主が代理して公共職業安定所長に申請する場合に支給されます。

(1)家族を介護するための介護休業を取得する人が対象です。対象家族は、配偶者、父母、子供、配偶者の父母と、同居かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫です。
(2)支給単位期間(介護休業を開始した日から起算した1か月ごとの期間)内で、休業開始時賃金月額(休業開始前の1カ月あたりの賃金)に対して、80%以上の賃金が支払われていない場合に限ります。
(3)介護休業開始前の2年間で、1カ月に11日以上働いた月が12カ月以上必要です。
(4)休業している日数が、支給単位期間ごとに20日以上必要です。
(5)介護休業終了後も雇用の継続が予定されていると認められることが必要です。
(6)契約期間が定まっている労働者については、その会社に引き続き1年以上雇われ、
介護休業開始予定日以後93日経過日から6か月後までに労働契約満了が明らかでないことが必要です。