2017年8月から社会保険制度が変わり、医療、介護では一部の者の個人負担が増え、公的年金の年金受給資格(老齢年金を受給するのに必要な最低加入期間)が10年に短縮されました。
以下、2017年8月1日からの医療、介護、年金各保険制度の変更内容を紹介します。
1.医療
高額医療費制度は、家計に対する医療費の自己負担額が過重なものとならないよう、医療費の自己負担に一定の歯止めを設ける仕組みです。1カ月の医療費が上限を超えた場合、上限を超えて支払った分を払い戻すものです。今月(2017年8月)1日から、70歳以上の方の上限額が次のように変わりました。
すなわち、年収370万円以上の高齢者(70歳以上)の場合、外来医療費の月額上限は現行の4万4,000円から5万7,600円になります。年収370万円未満でも、住宅税を支払っている世帯ならば上限は月額1.2万円から2千円増の月額1.4万円となります。
2.介護
介護保険制度は、加入者(被保険者)が保険料を出し合い、介護が必要なときに認定を受けて、必要な介護サービスを利用する制度で、加入者は、公的年金からの天引き等で支払う65歳以上の第1号被保険者と医療保険に加入している40歳から64歳の第2号被保険者(医療保険料納付と合わせ介護保険料を納付しています。)からなります。40歳から64歳が負担する保険料については、これらの人々が加入する医療保険各団体(協会けんぽ、健保組合、共済組合)が介護納付金を各団体が社会保険診療報酬支払基金に納付し、基金はそれを各市町村に交付する仕組みになっています。各市町村は国・都道府県・市町村が負担する公費とこの交付金、そして利用者の1割負担の合計で、介護サービスを提供しています。
従来、この介護納付金は、これらの人々が加入する医療保険の加入者である第2号被保険者の人数に応じて額が決まっていましたが、今月(2017年8月)1日から、収入に連動して保険料を増減する「総報酬割」が導入されました。「総報酬割」とは、各保険団体加入者の所得合計額に応じて保険者に負担額を配分する手法です。単純に人数だけをみて割り振るのをやめて、所得額合計が多く支払い能力のあるところには多く支払ってもらう、という考え方がベースになっています。この結果、大企業勤務者の保険料が増え、中小企業などで働く人の保険料が下がることになります。厚生労働省は負担増となるのは約1300万人、負担減となるのは約1700万人と試算しています。
3.年金
老齢基礎年金は、国民年金の加入者であった人の老後保障として原則65歳になった時から支給されます。年金が受給できるかどうかは、保険料を納めた期間(保険料納付済期間)と保険料が免除されていた期間(保険料免除期間)等を合算した期間により決まり、従来は、原則25年以上ある人が支給対象でした。これが、今月(2017年8月)1日から、10年以上あれば受給できることになりました。
但し、10年というのは最低条件であり、もらえる額は年額20万円にも満たないものになります。年金額を増やすには、以下のような対応が可能です。
(1)10年を超えて年金保険料を納付し続けること。
(2)過去において、国民年金保険料が適切に納付できていなかった者は、2018年9月までは過去5年分まで納付できる「後納制度」を利用できます。
(3)保険料免除(学生納付特例、若年者納付猶予は多くの者が利用しています。)の期間がある者は、過去10年以内の期間につき免除期間の保険料を納めることで年金額を加算できます。
(4)40年の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合であって、厚生年金・共済組合等に加入していないときは、60歳以降でも任意加入することができます。