2016年7月の有効求人倍率 -2カ月ですべての都道府県で1倍を超え、完全失業率も3.0%と21年2カ月ぶりの低い水準-

雇用情勢2016年7月分

2016年7月の有効求人倍率は1.37倍(季節調整値、季節による変動を除いた数字)と前月と同じ高水準です。7月の完全失業率は3.0%で前月より0.1ポイント低下し、平成7年5月以来21年2ヵ月ぶりの低水準となりました。

厚生労働省、総務省とも、雇用情勢は引続き改善方向で推移している、としています。

厚生労働省では、公共職業安定所(ハローワーク)における求人、求職、就職の状況をとりまとめ、求人倍率などの指標を作成し、一般職業紹介状況として毎月公表しています。
(7月分)
総務省では、就業状況、失業者、失業率など把握するため、「労働力調査」を毎月実施・公表しています。
(7月分)
(注)有効求人倍率は、仕事を求めている求職者一人に対し企業から何人の求人があるかを示す、労働市場の基本指標で、完全失業率は、労働力人口に対する完全失業者数で表わされます。両指標とも、各月の数字は、通常、季節による変動要因を除いた季節調整値が使用されます。

2つの調査の2016年7月分の状況が両省から8月30日に公表されました。総じて、雇用情勢は好調な状況を続けています。
2016年7月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月と同水準で、1.37倍でした。2010(平成22年)以降、有効求職者の減少、有効求人数の増加が続いています。

新規求人数は、内閣府の景気動向指数の先行系列に採用されている唯一の労働統計指標です。景気に先行して変動する先行系列とされているのは、企業は景気がよくなると感じると求人活動を活発化し、景気の陰りを感じると、新たな求人活動を控えるからです。7月の新規求人数(当月に新たに受け付けた求人数、原数値)は前年同月と比較すると1.1%減となりました。前年同月比を産業別にみると、宿泊業・飲食サービス業(4.3%増ですが、中国からの観光客の減少で伸び率はやや鈍化しています。)、教育・学習支援業(4.0%増)、医療・福祉業(1.7%増)などで増加となり、サービス業(他に分類されないもの)(6.1%減)、製造業(3.5%減)、生活関連サービス業・娯楽業(3.2%減)などで減少となりました。厚生労働省は、「新規の求人数の減少は、7月の営業日が例年に比べ少なかったこと(土日が多く、また、7月18日が今年から海の日として国民祝日になりました。)によるもの。」としています。但し、「サービス業(他に分類されないもの)」の中でも、「職業紹介・労働者派遣業」の減少が12.4%減と大きく、今後の動向に注意が必要です。

7月の都道府県別の有効求人倍率(季節調整値)をみると、全国で最高は東京都の2.04倍(4月以降2倍を超えています。)、次いで福井県1.82倍、岐阜県1.71倍などとなっています。最低は埼玉県(埼玉県は東京への通勤者が多く、求人も東京の企業からのものが多く、埼玉県内からのものが少ない。)と鹿児島県の1.03倍、次いで沖縄県の1.04倍と、常連の県が並んでいますが、人手不足は全国的で、6月には、昭和38年に統計を取り始めてから初めて全都道府県で1倍を超えましたが、7月も2か月連続で全都道府県1倍超えとなっています。

kyujin201607

(注)
1.月別の数値は季節調整値である。なお、平成27年12月以前の数値は、平成28年1月分公表時に新季節指数により改訂されている。
2.文中の正社員有効求人倍率は正社員の月間有効求人数からパートタイムを除く常用の月間有効求職者数で除して算出しているが、パートタイムを除く常用の有効求職者には派遣労働者や契約社員を希望する者も含まれるため、厳密な意味での正社員有効求人倍率より低い値となる。
3.文中の産業分類は、平成25年10月改定の「日本標準産業分類」に基づくもの。

2016年7月の全国の完全失業率(季節調整値)も同日総務省統計局から公表されましたが、3.0%で前月より0.1ポイント改善し、平成7年5月以来21年2ヵ月ぶりの低い水準となりました。
(注)完全失業率は、15歳以上の働く意欲のある人(労働力人口)のうち、仕事を探しても仕事に就くことのできない人(完全失業者)の割合です。

6月には、就業者(働いている者)が6,479万人と前年同月に比べ98万人増加し(20カ月連続の増加)、完全失業者数も203万人と、前年同月に比べて19万人減りました(74カ月連続で減少)。求職理由をみると、「勤め先や事業の都合による離職」が4万人の減少、「自発的な離職(自己都合)」が2万人の減少でした。雇用情勢は引続き改善傾向で推移していると総務省統計局は分析しています。

8月2日に閣議決定された「未来への投資を実現する経済対策」では、「少子高齢化や潜在成長力の低迷といった構造要因も背景に、現状の 景気は、雇用・所得環境は改善する一方で、個人消費や民間投資は力強さを欠いた状況にある。また、新興国経済に陰りが見え、英国国民 投票における EU 離脱の選択等、世界経済の需要の低迷、成長の減速 のリスクが懸念される。」としています。こうした状況を踏まえ、厚生労働省は、「景気が緩やかに回復していることに伴い、全国的に雇用情勢の改善が続いている。各都道府県で改善の傾向があるので、全国での回復の兆しも底堅い。但し、今後も雇用に影響を与える可能性があるイギリスのEU離脱問題など海外の経済情勢や熊本地震の雇用への影響について十分な注意が必要である」としています。