2019年8月の有効求人倍率は1.59倍(季節調整値、季節による変動を除いた数字)と前月と同水準でした。1974年1月(1.64倍)以来の高水準が続いています。また、2016年10月以降35ヵ月連続ですべての都道府県で1倍以上となりました(求人受理地別。最低の神奈川県でも1.18倍)。2017年6月以降、26ヵ月連続で、正社員の有効求人倍率が1倍を上回っています(8月は1.14倍(季節調整値))。8月の完全失業率は2.2%(季節調整値)と前月と同水準でした。前年同月比でみると、就業者は80ヵ月連続で増加、完全失業者は3ヵ月連続で減少しました(就業者は69万人の増加で6,751万人、完全失業者は13万人の減少で157万人)。労働市場は、働く意欲のある人は仕事を選ばなければ基本的に誰でも働くことができる、「完全雇用」の状態にあるといえます。
厚生労働省では、公共職業安定所(ハローワーク)における求人、求職、就職の状況をとりまとめ、求人倍率などの指標を作成し、一般職業紹介状況として毎月公表しています。
(8月分)
総務省では、就業状況、失業者、失業率など把握するため、「労働力調査」を毎月実施・公表しています。
(8月分)
(注)有効求人倍率は、仕事を求めている求職者一人に対し企業から何人の求人があるかを示す、労働市場の基本指標で、完全失業率は、労働力人口に対する完全失業者数で表わされます。両指標とも、各月の数字は、通常、季節による変動要因を除いた季節調整値が使用されます。2つの調査の2019年8月分の状況が両省から10月1日に公表されました。総じて、雇用情勢は好調な状況を続けています。
2019年8月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月と同水準の1.59倍でした。有効求人(季節調整値)は前月と比べ0.1%増加し、有効求職者(同)は0.2%増加しました。企業の人手不足感は続いており、2018年に約44年ぶりの高水準である有効求人倍率1.63 倍を記録して以来、同様の水準で推移しています。また、2017年6月以降正社員の有効求人倍率が1倍を上回っており、8月は1.14倍となりました。正社員も人手不足の職場が増えています。最近は、非正規社員を正社員化する動きが広がっています。なお、新規求人倍率(季節調整値)は2.45倍と前月から0.11ポイント上回りました。
新規求人数は、内閣府の景気動向指数の先行系列に採用されている唯一の労働統計指標です。景気に先行して変動する先行系列とされているのは、企業は景気がよくなると感じると求人活動を活発化し、景気の陰りを感じると、新たな求人活動を控えるからです。8月の新規求人数(当月に新たに受け付けた求人数、原数値)は前年同月と比較すると5.9%減となりました。前年同月比を産業別にみると、教育・学習支援業(1.5%増)で増加となり、製造業(15.9%減)、卸売業・小売業(8.9%減)、サービス業(他に分類されないもの)(8.3%減)、生活関連サービス業・娯楽業(7.8%減)、運輸業・郵便業(7.7%減)などで減少となりました。
主要産業における対前年同月比の推移
8月の都道府県別の有効求人倍率(季節調整値)をみると、求人受理地別では、最高は東京都の2.10倍、最低は神奈川県の1.18倍、実際の就業地別では、最高は岐阜県の2.13倍、最低は北海道と高知県の1.29倍となりました。人手不足は全国的で、受理地別でも就業地別でも、全都道府県で求人倍率が1倍以上となっています。東京都、大阪府、愛知県等一部の都府県以外では低く出がちな求人受理地別でみても、全都道府県で35ヵ月連続1倍以上となっています。
求人、求職及び求人倍率の推移
2019年8月の全国の完全失業率(季節調整値)は、2.2%と前月と同水準でした。2018年に約25年ぶりの低水準である2%台の水準を記録して以来、同様の水準で推移しています。8月は、就業者(働いている者)が6,751万人と前年同月に比べ69万人の増加となり(80ヵ月連続の増加)、完全失業者数は157万人と、前年同月に比べて13万人の減少となりました(3ヵ月連続の減少)。求職理由をみると、「勤め先や事業の都合による離職」が前年同月に比べて3万人の減少、「自発的な離職(自己都合)」が3万人減少しました。完全失業率(季節調整値)は、2019年1月分結果発表時、過去に遡って改定されています。
厚生労働省は「景気回復を背景として、製造業を中心に主要な産業の多くで新規の求人数が好調なことから、雇用情勢は着実に改善が進み、今後も堅調に推移すると見られる」としています。雇用情勢の改善が進む中、人手不足が深刻化している職種について、厚生労働省では、「魅力ある職場づくり」「マッチング支援」「人材開発」「生産性向上」といった観点から企業への支援を実施しています。人手不足の背景としては、介護、運輸等とくに第3次産業分野での処遇改善が遅れていることなど、多くの原因が考えられますが、育児期女性の活用が進んでいないこととともに、少子化で若年人口が減少している中で増加している高齢者の活用が遅れていることも原因といえるでしょう。多様で柔軟な働き方を工夫しつつ、70歳程度までの本格就業の実現を目指す必要があります(注)。
(注)2019年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2019」では、「人生100年時代を迎え、働く意欲がある高齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高齢者の活躍の場を整備することが必要である。」とし、「65歳から70歳までの就業機会確保については、多様な選択肢を法制度上整え、当該企業としては、そのうちどのような選択肢を用意するか、労使で話し合う仕組み、また、当該個人にどの選択肢を適用するか、企業が当該個人と相談し、選択ができるような仕組みを検討する。」としています。