2018年9月の有効求人倍率は1.64倍(季節調整値、季節による変動を除いた数字)と前月に比べて0.01ポイント上昇しました。1974年1月(1.64倍)以来の高水準が続いています。また、一昨年10月以降24ヵ月連続ですべての都道府県で1倍以上となりました(求人受理地別。最低の北海道と神奈川県でも1.19倍)。昨年6月以降、15ヵ月連続で、正社員の有効求人倍率が1倍を上回っています(9月は1.14倍(季節調整値))。9月の完全失業率は2.3%(季節調整値)と前月に比べ0.1ポイント低下(改善)しました。前年同月比でみると、就業者は69ヵ月連続で増加、完全失業者は100ヵ月連続で減少しています(就業者は119万人の増加で6,715万人、完全失業者は28万人の減少で162万人)。労働市場は、働く意欲のある人は仕事を選ばなければ基本的に誰でも働くことができる、「完全雇用」の状態にあるといえます。
厚生労働省では、公共職業安定所(ハローワーク)における求人、求職、就職の状況をとりまとめ、求人倍率などの指標を作成し、一般職業紹介状況として毎月公表しています。
(9月分)
総務省では、就業状況、失業者、失業率など把握するため、「労働力調査」を毎月実施・公表しています。
(9月分)
(注)有効求人倍率は、仕事を求めている求職者一人に対し企業から何人の求人があるかを示す、労働市場の基本指標で、完全失業率は、労働力人口に対する完全失業者数で表わされます。両指標とも、各月の数字は、通常、季節による変動要因を除いた季節調整値が使用されます。
2つの調査の2018年9月分の状況が両省から10月30日に公表されました。総じて、雇用情勢は好調な状況を続けています。
2018年9月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月に比べ0.01ポイント上昇し1.64倍でした。有効求人(季節調整値)は前月と比べ0.4%減少し、有効求職者(同)は0.6%減少しました。企業の人手不足感は続いており、昨年4月には、バブル期の最高水準(1990年7月の1.46倍)を超え、今年9月には、1974(昭和49)年1月(石油危機の到来後の不況で高度経済成長が終わりをつげる直前)以来、44年7ヵ月ぶりに1.64倍となりました。また、昨年6月以降正社員の有効求人倍率が1倍を上回っており、今年9月は1.14倍となりました。正社員も人手不足の職場が増えています。最近は、非正規社員を正社員化する動きが広がっています。なお、新規求人倍率(季節調整値)は2.50倍と、前月を0.16ポイント上回りました。
新規求人数は、内閣府の景気動向指数の先行系列に採用されている唯一の労働統計指標です。景気に先行して変動する先行系列とされているのは、企業は景気がよくなると感じると求人活動を活発化し、景気の陰りを感じると、新たな求人活動を控えるからです。9月の新規求人数(当月に新たに受け付けた求人数、原数値)は前年同月と比較すると6.6%減となりました。前年同月比が減少したのは2016年10月以来、1年10ヶ月ぶりとなります。前年同月比を産業別にみると、情報通信業(13.4%減)、教育・学習支援業(13.1%減)、 生活関連サービス業・娯楽業 (10.1%減)、 宿泊業・飲食サービス業(9.6%減) 、サービス業 (他に分類されないもの)(9.2%減)などで減少となりました。
主要産業における対前年同月比の推移
9月の都道府県別の有効求人倍率(季節調整値)をみると、求人受理地別では、最高は東京都の2.18倍、最低は北海道と神奈川県の1.19倍、実際の就業地別では、最高は福井県の2.20倍、最低は北海道の1.23倍となりました。人手不足は全国的で、求人受理地別でも就業地別でも、全都道府県で1倍以上となっています。東京都、大阪府、愛知県等一部の都府県以外では低く出がちな求人受理地別でみても、全都道府県で24ヵ月連続1倍以上となっています。
求人、求職及び求人倍率の推移
2018年9月の全国の完全失業率(季節調整値)は、2.3%と前月に比べ0.1ポイント低下(改善)しました。
9月は、就業者(働いている者)が6,715万人と前年同月に比べ119万人の増加となり(69ヵ月連続の増加)、完全失業者数も162万人と、前年同月に比べて28万人の減少となりました(100ヵ月連続で減少)。求職理由をみると、「勤め先や事業の都合による離職」が10万人、「自発的な離職(自己都合)」が13万人それぞれ減少しました。
完全失業率(季節調整値)は、2018年1月分結果発表時、過去に遡って改定されています。厚生労働省は「景気回復を背景として、製造業を中心に主要な産業の多くで新規の求人数が好調なことから、雇用情勢は着実に改善が進み、今後も堅調に推移すると見られる」としています。このように、雇用情勢の改善が進む中、人手不足が一段と深刻化しています。介護、運輸等とくに第3次産業分野での処遇改善が遅れていることなど、多くの原因が考えられますが、育児期女性の活用が進んでいないこととともに、少子化で若年人口が減少している中で増加している高齢者の活用が遅れていることも原因といえるでしょう。多様で柔軟な働き方を工夫しつつ、70歳程度までの本格就業の実現を目指す必要があります(注)。
(注)2018年6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」では、「年齢による画一的な考え方を見直し、全ての世代の人々が希望に応じて意欲・能力を活かして活躍できるエイジフリー社会を目指す。」とし、「65歳以上への継続雇用年齢の引上げに向けて環境整備を進める。その際、高齢者は健康面や意欲、能力などの面で個人差が存在するという高齢者雇用の多様性を踏まえ、一律の処遇でなく、成果を重視する評価・報酬体系を構築する。このため、高齢者に係る賃金制度や能力評価制度の構築に取り組む企業に対し、その整備費用を補助する。」としています。