2月の有効求人倍率（季節調整値）は1.28倍と高い水準が続いています。完全失業率（同）は3.3％と前月よりやや上昇しましたが、自発的離職者（自己都合で離職した者）が増えたためで、非自発的離職者（解雇等会社都合で離職した者）は減少しています（季節調整値でみた数字）。厚生労働省、総務省とも、雇用情勢は引続き改善方向で推移している、としています。
厚生労働省では、公共職業安定所（ハローワーク）における求人、求職、就職の状況をとりまとめ、求人倍率などの指標を作成し、一般職業紹介状況として毎月公表しています。
（2016年2月分）
総務省では、就業状況、失業者、失業率など把握するため、「労働力調査」を毎月実施・公表しています。
（2016年2月分）
（注）有効求人倍率は、仕事を求めている求職者一人に対し企業から何人の求人があるかを示す、労働市場の基本指標で、完全失業率は、労働力人口に対する完全失業者数で表わされます。両指標とも、各月の数字は、通常、季節による変動要因を除いた季節調整値が使用されます。
２つの調査の2016年2月分の状況が両省から3月29日に公表されました。総じて、雇用情勢は好調な状況を続けています。
2016年２月の有効求人倍率（季節調整値）は、前月と同じ1.28倍となりました。
正社員だけでみた正社員有効求人倍率は、２月では0.81倍（季節調整値）と前月を0.01ポイント上回りました。
2月の新規求人数（当月に新たに受け付けた求人数、原数値）は前年同月と比較すると9.6％増（季節調整値でみても、前月に比べ1.7％増）となりました。前年同月比を産業別にみると、宿泊業・飲食サービス業（訪日外国人観光客の増加の影響等で23.3％増）、卸売・小売業（11.6％増）、生活関連サービス業・娯楽業（10.1％増）、医療・福祉業（8.7%増）などで高い伸びとなりました（製造業は6，5％の増）。新規求人数は、内閣府の景気動向指数の先行系列に採用されている唯一の労働統計指標です。景気に先行して変動する先行系列とされているのは、企業は景気がよくなると感じると求人活動を活発化し、景気の陰りを感じると、新たな求人活動を控えるからです。1月のデータでは、新規求人数の伸びの鈍化、製造業求人数の減少が見られましたが、2月のデータでは、新規求人数（季節調整値）の前月比・製造業求人数の前年同月比はプラスに戻り、前年同月比の産業計も高い伸びを示しました。
２月の都道府県別の有効求人倍率（季節調整値）をみると、全国で最高は東京都の1.90倍、最低クラスは沖縄県の0.9１倍、鹿児島県の0.94倍、埼玉県（埼玉県は東京への通勤者が多く、求人も東京の企業からのものが多く、埼玉県内からのものが少ない。）の0.96倍と、常連の県が並んでいます。
（注）
１．月別の数値は季節調整値である。なお、平成2７年12月以前の数値は、平成28年1月分公表時に新季節指数により改訂されている。
２．文中の正社員有効求人倍率は正社員の月間有効求人数からパートタイムを除く常用の月間有効求職者数で除して算出しているが、パートタイムを除く常用の有効求職者には派遣労働者や契約社員を希望する者も含まれるため、厳密な意味での正社員有効求人倍率より低い値となる。
３．文中の産業分類は、平成25年10月改定の「日本標準産業分類」に基づくもの。
2016年2月の全国の完全失業率（季節調整値）も同日総務省統計局から公表されましたが、3.3％と前月に比べ0.1ポイント上昇しました。
（注）完全失業率は、15歳以上の働く意欲のある人（労働力人口）のうち、仕事を探しても仕事に就くことのできない人（完全失業者）の割合です。
2月には、就業者（働いている者）が6,351万人と前年同月に比べ29万人増加し（15カ月連続の増加）、完全失業者数も213万人と、前年同月に比べて13万人減りました（69カ月連続で減少）。求職理由をみると、「勤め先や事業の都合による離職」、「自発的な離職（自己都合）」ともに3万人減少しています。完全失業率（季節調整値）は0.1％上昇しましたが、就業者、完全失業者の内容をみると、雇用情勢は引続き改善傾向で推移していると総務省統計局は分析しています。
このように、総じて、雇用情勢は好調な状況を続けていますが、4月1日に日銀が発表した日銀短観（企業短期経済観測調査）2016年3月分では、企業の景況感を示す業況判断指数（DI、景気が良いと答えた企業の割合から悪いと答えた企業の割合を足引いた値）が、大企業製造業では、前回（昨年12月調査）より6ポイント下落のプラス６ポイントとなりました、２四半期ぶりの悪化です。年始からの急速な円高・株安や中国など新興国の景気失速による収益悪化への懸念が、企業の景気判断に悪影響を与えています。今後の雇用動向については十分な注意が必要です。