高年齢者が活躍できる環境整備を - 2016年版労働経済白書

厚生労働省は9月30日、2016年版「労働経済の分析」(労働経済白書)を公表し、少子高齢化に伴う人口減少が見込まれる中で、人手不足感解消のため、就業意欲のある高年齢者が活躍できる環境整備が必要だとしています。

「労働経済白書」は、雇用、賃金、労働時間、勤労者家計などの現状や課題について、統計データを活用して分析する報告書で、「労働白書」と呼ばれていた2000(平成12)年版以前も含め、今回で68回目の白書となります(2001年1月厚生省と労働省が統合され、「厚生白書」が労働政策紹介も含めた「厚生労働白書」となりました)。

2016年版では、少子高齢化による供給制約の克服に向け、労働生産性の向上や希望する方が就労などにより活躍できる環境整備が必要であるとの認識のもと、「誰もが活躍できる社会の実現と労働生産性の向上に向けた課題」と題し、労働生産性の向上に向けた課題、誰もが活躍できる働き方に向けた方策について分析を行っています。特に、高年齢者の働き方と活躍のための環境整備を強調しています。

白書は、第2章「労働生産性の向上に向けたわが国の現状と課題」の中で、わが国の労働時間当たりの労働生産性は各国に比べ低い水準となっており、少子高齢化による労働供給の制約を克服するためには、IT投資を始めとする資本投入の増加に加え、一人ひとりが生み出す付加価値(労働生産性)の向上が必要不可欠とし、ソフトウェア等の情報化資産、Off-JTを始めとする人的資本への投資を増加させることが大きな課題としています。

図1 OECD諸国における労働生産性の水準
OECD諸国における労働生産性の水準

第3章「人口減少の中で誰もが活躍できる社会に向けて」の中では、高年齢者の働き方と活躍のための環境整備が強調されています。わが国では今後、人口が減少するが高年齢者は増加が見込まれるとし、高年齢者の中には、就業に至っていないものの就業意欲のある方々が、2012年で313万人もいるとし、それらの方々が活躍できるよう、多様な働き方が可能な環境整備が必要である、としています。

具体的には、①60歳以上の高年齢者では、男女とも「現在の仕事を続けたい」とする者が8割を超えており(総務省「平成24年就業構造基本調査」)、継続雇用に向けた施策の実施が重要、②「自分の都合のよい時間に働きたいから」等の理由で非正規雇用につく高年齢者も多く(上記調査等)、柔軟な労働時間設定も必要、③起業を希望する高年齢者は増加しており、起業支援施策の実施が必要、④厚生労働省「中高年者縦断調査」(第9回、2013年)によると、社会活動を現役時(50~59歳時)に行った者のほうが、58~67歳時点の就業割合が高くなっており、54歳~63歳時に能力開発・自己啓発の経験があるほうが、58~67歳時点での収入が多いので、現役時代から、積極的な社会参加を行うことや能力開発・自己啓発を行うことが重要、と提言しています。