都道府県別の最低賃金(時間給)について、労使代表や有識者で構成された中央最低賃金審議会は7月30日、今年度の引上げ額の目安を決め、塩崎恭久厚生労働大臣へ答申しました。
全国平均で18円と、目安を時間給で示すようになった2002年度以降、最大の上げ幅となりました。大幅な引上げを求めた政府の意向を反映しています。
7月30日、労使代表や有識者で構成された中央最低賃金審議会(会長、仁田道夫・国士舘大教授)は、都道府県別の最低賃金(時間給)について、前日に同審議会の小委員会で取りまとめた今年度の引上げ額の目安を了承し、塩崎恭久厚労相へ答申しました。
所得や物価などの指標を基に各都道府県をA~Dの4ランクに分け、Aは19円、Bは18円、C、Dはそれぞれ16円の目安で、人口を加味した全国平均は18円となり、目安を時間給で示すようになった2002年度以降、最大の上げ幅となりました。
2桁の引上げは4年連続となり、大幅な引上げを求めた政府の意向を反映した形となっています。
10月をめどに、この目安を参考に各都道府県に置かれている地方最低賃金審議会がそれぞれ新しい最低賃金を決めますが、通常目安通り引上げられますので、そうなれば、最も高い東京都は907円、最も低い鳥取や沖縄など7県は693円、最低賃金の全国平均は現行の780円から798円になります。
最低賃金は、労働者の生計費や賃金状況、企業の支払い能力から総合的に決められますが、審議会では、欧米の最低賃金は時給1,000円を超える国が多いこと、非正規従業員の賃金向上、そして春闘での賃金引上げの状況などを踏まえ労働側が大幅な引上げを求め、政府も経済の好循環を目指し、大幅引上げを求めるメッセージを出しました。
経営側は、引上げの必要性は認めたものの、中小企業の支払い能力などから大幅引上げに難色を示していました。
今回の引上げ幅は、前年度比引上げ率に換算すると2.3%になります。
政府経済見通し(7月の年央試算値)の15年度消費者物価指数上昇率の0.6%を大きく上回る「実質引き上げ」で、15年春季労使交渉の最終集計結果(連合調べ)の、定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率2.2%をも上回り、非正規従業員の賃金向上に配慮したものです。
内閣府は、7月23日の経済財政諮問会議で、最低賃金を10~20円引き上げ、300万~400万人の賃金が上昇した場合、総雇用者所得が400億~900億円増えるという試算を公表しました。
安倍首相は同会議で、「最低賃金の大幅な引上げが可能となるよう、中小企業の環境整備やサービス産業の生産性向上に全力をあげる」と表明しましたが、各地方最低賃金審議会で今回の目安に沿った改定が順調に決まることが期待されます。
なお、最低賃金が生活保護水準を時給に換算した額を下回る「逆転現象」が一部都道府県で続いていましたが、昨年度に解消されています。
2015年度も最低賃金の大幅引き上げにより生活保護の給付水準を引き続き上回る見通しです。