短時間労働者への被用者保険の適用拡大や年金額の改定ルールの見直し等からなる年金制度改革法案が11月29日の衆議院本会議で可決、参議院に送付されました。政府・与党は今国会(現時点では、12月14日閉会予定)での成立をめざしており、12月2日から参議院での審議が始まりました。
「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律案」
(年金制度改革法案)の概要は、以下の通りです。
1.短時間労働者への被用者保険の適用拡大の促進
従来は、一般的に週30時間以上働く方が厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入の対象でしたが、本年(2016年)10月からは従業員501人以上の企業で、週20時間以上働く方などにも対象が広がりました。今回の改正案では、500人以下の企業も、労使の合意に基づき、企業単位で短時間労働者への適用拡大を可能としています。
2.国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料の免除
次世代育成支援の観点から、国民年金第1号被保険者(自営業者、学生、無職の方など、国民年金だけの加入者) の産前産後期間の保険料を免除し、免除期間は満額の基礎年金給付を保障するものです。この財源として、国民年金保険料の月額100円程度の引上げを予定しています。施行は、2019(平成31)年4月を予定しています。
3.年金額の改定ルールの見直し((1)は平成30年4月、(2)は平成33年4月施行)
公的年金制度の持続可能性を高め、将来世代の給付水準を確保するため、年金額の改定ルールを見直すものです。具体的内容は以下の通りです。なお、(1)は2018(平成30)年4月、(2)は2021(平成33)年4月施行を予定しています。
- マクロ経済スライドについて、年金の名目額が前年度を下回らない措置を維持しつつ、賃金変動や物価変動の範囲内で、前年度までの未調整分を含めて調整する。
- 賃金変動が物価変動を下回る場合に、賃金変動に合わせて年金額を改定する考え方を徹底する。
4.年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の組織等の見直し(平成29年10月(一部公布日から3月以内)施行)
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)について、国民から一層信頼される組織体制の確立を図り、年金積立金をより安全かつ効率的に運用する観点から、合議制の経営委員会を設け、基本ポートフォリオ(国内債券、国内株式、外国債券、外国株式の資産構成割合)等の重要な方針に係る意思決定を行うとともに、法人役員の業務執行に対する監督を行わせるほか、年金積立金の運用に関し、リスク管理の方法の多様化など運用方法を追加する措置を講ずる、というものです。
安倍首相は、法案は世代間の公平を図り、年金制度を持続可能とするためのものだと強調しているのに対し、民進党等野党は、「年金カット法案」と批判し生活保護世帯が増加すると反発しています。これに対し、政府は、低所得や低年金の高齢者に対する年金の保障機能の強化に取り組んでいくとしています。