現在の雇用政策では、55歳以上を「高年齢者」と呼んでいます。他方、社会保障関係では、65歳以上を「高齢者」とすることが多いようです。
日本は、現在、前例のない人口急減・超高齢社会を迎えつつあります。近い将来、公的年金支給開始年齢の70歳程度までの引上げ検討が表面化するでしょう。また、先進国と呼ばれるOECD諸国の平均並みの経済成長を維持するためには、女性と高齢者の就業率と労働生産性を高める必要があります。多様な選択肢のある、70歳程度までの質の高い雇用就業の実現に本格的に取り組むことが急務であると言えましょう。
70歳までの本格的雇用就業をめざすとなると、今後、「高齢者」と呼ばれる年齢は、雇用政策でも社会保障政策でも70歳以上とすべきではないでしょうか。そして、55歳から69歳は、今後は「後期中年者」とし、この年齢層の者にはできるだけ働いてもらうよう雇用政策を強力に展開すべきです。ちなみに、他の年齢層も、「前期中年者」(40~54歳)、「後期若年者」(25~39歳)、「前期若年者」(15~24歳)といった呼び方を提唱したいと思います。
70歳までの本格的雇用就業を実現するためには、若い時期から高齢期まで、長い職業生涯を見据え、以下のような年齢別対応策を取る必要があります。
70歳~ 「高齢者」(雇用対策、社会保障政策を通じて、「高齢者」の使用は70歳以上に統一)
○老後生活を過ごすにふさわしい受給額が保障され、持続可能な公的年金制度の維持(公的年金支給開始年齢は、70歳に引上げ)
○生きがい就労の促進
55-69歳 「後期中年者」
○就業率アップ
○雇用保険適用・給付年齢の70歳未満までの引上げ
○60歳代前半層の雇用内容の改善
○弾力的な引退を確保するため、本格的なフルタイム就労から短時間・軽易な形態まで、多様な就業機会の提供
〇就業困難な低所得・低年金の者に対する所得保障
40-54歳 「前期中年者」
○キャリアの見直し・転換の支援
〇年功賃金見直しのため、教育費・住宅費の自己負担の軽減
25-39歳 「後期若年者」
○企業内での人材育成支援(社会人大学院教育含む)
○非正規労働者の処遇向上(同一労働同一賃金原則の適用促進、「限定正社員」の活用等)
15-24歳 「前期若年者」
○学校から労働市場への円滑移行、学校教育及びその接続段階での職業教育の強化
(※)全年齢を通じ、キャリアカウンセリング、職業教育訓練の受講保障
(文:佐多錬志郎)